今、再評価されるべき映画『ゴジラ (84年版)』

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特撮Love!!
純朴特撮陶芸家の
奥田大器です。

前回の『妖星ゴラス』に続いて、
奥田大器の”特撮探訪”第二回です。
予告通り『ゴジラ84』やります。

このゴジラ映画は、
1984年(昭和59年)の12月公開です。
今から32年前の作品です。

ゴジラ生誕30周年記念の映画です。
僕、この『ゴジラ84』大好きなんです。
でもゴジラマニアの評価は著しく低い。

確かに”内容的”には”惜しい”映画です。
怪獣映画に皆が求める”解放感”はありません。
全部ファウルチップという感じ。
それも真後ろに飛ぶファウルチップ、
タイミングは合ってるのに芯食ってない
感じが全編を覆っています。

しかし『ゴジラ84』は二つの意味で
今こそ再評価するべきゴジラ映画だと思います。
それは、
“スターウォーズ後の日本のSF映画”、
“80年代お気楽時代の映画”
という二つの時代性が交差している作品だからです。

78年に『スターウォーズ』が日本公開されます。
それを機に日本にSFブームが起こります。
そんな中、日本には『ゴジラ』があるとして
大東宝、大田中友幸プロデューサーが製作した
“国策大特撮SF映画”です。

同年の春には
『さよならジュピター』が公開されます。

『さよならジュピター』と『ゴジラ84』は、
東宝と田中友幸が
1984年に世に放った連立方程式です。

田中友幸(川北紘一×中野昭慶)×
橋本幸治(さよジュピ×84ゴジラ)
-小松左京=平成ゴジラ
みたいな感じです。

この1984年の”2大怪作”の通低テーマは、
『SW』と『未知との遭遇』に対する
邦画
界のファイナルアンサーです。

30年前には日本映画界に
ハリウッドの超大作の
むこうを張る気概があったのです。

『さよならジュピター』は
『インターステラー』や『オデッセイ』を
邦画で作るぞみたいな感じです。
まっ、華々しく散ったのですが・・・。

しかし80年代中盤にはまだ超大SFテーマを
映画化する気概が邦画界に残っていた訳です。

『さよならジュピター』が色んな意味で
散った事により大サイエンスワンダーな
邦画は平成ゴジラシリーズしか作られなくなります。
(ある意味とどめを刺された・・・)

そしてもう一つのテーマ、
テーマというか時代の呪縛。
“80年代”というショーケースに
幽閉されたままの珍しいゴジラ映画です。

僕は81年生まれです。
ですからこの84ゴジラの復活に関する
ファンの盛り上がりを知る術はありません。
MOOK本で追体験するだけです。

また信楽にいたから実体験として
感じる事も出来なかったと思います。

しかしこの映画からは
“80年代”という”時空”を
ビンビンに感じます。
出演者は、
沢口靖子、田中健、宅間伸、
80年代以外の何物でも無い!!

この映画の公開翌年に、
というか85年のお正月映画なので
その年に阪神が優勝します。

映画全体から80年代の
国産大作イベント映画臭が
プンプンしています。

『ゴジラ84』は1984年という”時空”に
観た人を強引に戻すまれな映画です。
そのタイムスリップ感が堪らなく
“幸福”を感じさせてくれます。
ちょっと癖になるくらい。

角川映画やこの後になるホイチョイなんかの
イベント映画としての系譜にがっちり入ってる
珍しい東宝特撮映画です。

古き良き、
成長と狂乱とノー天気な80年代、
消費不況も無ければ中国も怖くない、
ネットも無ければ格差も無い。

呑気に土曜の夜に
ひょうきん族を見ていた
あの頃の既視感に
“幸せ”に襲われる映画です。

なぜかゴジラシリーズでこの作品だけ
異様な”80年代臭”に包まれています。
だから僕は大好きです。

78年の『SW』という
映画史に残るSF映画の
フォローをせざるを得なかった。
そんな中、
日本には強烈なオリジナルキャラクター
『ゴジラ』がある。
復活はある意味必然です。

しかしいかんせん『SW』以後の
世界的SF映画ブームの
最後の方にひっかかっているので
異様な”80年代臭”を放つ
この作品が誕生したのだと思います。

内容については
散々語られて
ボロッカスに言われているので
細かい事は言いません。

しかしゴジラシリーズで
この84ゴジラだけで
挑戦している事があります。

それは、
“ポリティカルフィクション”を
真面目にやっています。
“政治劇”をゴジラでやっちゃってます。

主人公は沢口靖子や田中健なのですが
もう一つの軸の主人公として
小林桂樹演じる三田村総理が出て来ます。
(竹下登と中曽根康弘を足して2で割ったような、
ここも80年代。)

このゴジラ映画は、
今までやってそうでやってなかった
日本国政府や
諸外国(米国とソ連)政府が
ゴジラが出現したら
どうやって対処するかという
シミュレーションを描いています。
(新宿に向けて核ミサイルが落ちて来ます、
今だとある意味シャレにならん)

又、ゴジラ対策の閣議を
描写するシーンがあります。
これは今現在に至るまで
ゴジラシリーズでは
唯一この作品だけです。

そこで大蔵大臣と通産大臣が
嫌味を言いあったり、
統幕長(自衛隊の現場トップ)が
核ミサイルを使用した場合の予想被害や
使いたがるアメリカやソ連の思惑を
総理に進言する場面があったりします。
ここリアルです。
これ田原総一郎がスタッフとして参加しています。
これも80年代やね~。

真面目にゴジラを作れという
プレッシャーが凄かったんでしょう。
総理大臣をある意味
主人公にしちゃってます。
ぶっ飛んでます。

なのに途中まで真面目に
ポリティカルフィクションをやってるのに
急に”スーパーX”という
超兵器が出てくるので”?”となったりします。
そういう所が実に惜しいしお茶目。
(スーパーXは大好きです。)

そんな観た人を
強引に”1984年”に引き戻す映画、
『ゴジラ84』是非一度ご鑑賞あれ。
これはTSUTAYAならどこでも置いています。
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生頼範義大先生の
超かっちょいい
イメージポスターもありますが
僕は写真一枚目のポスターが好きです。

「いま 壮大なロマンの目覚め!」

後、エンディングテーマもかっこいい。
これも80年代って感じ。
スターシスターズって誰!?

・次回の特撮ネタ、
『ヤマトタケル』はこちら。

・前回の特撮ネタ、
『妖星ゴラス』はこちら。

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